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2009年11月01日

北方水滸伝

いろいろな人から面白いよ!と推薦を受けて読み始めた北方謙三の「水滸伝」。全19巻を2ヶ月かけてやっと先日読み終わった。

確かに19巻という長さではあるがあっという間に読めるほど物語には引き込まれる。さすがに15巻辺りでは少し飽きたりもしたがラスト2巻の宗軍との戦い描写は圧巻。この辺りでは1日1冊ペースだった。

但し、まだ読んだ事のない人は通常の奇書と呼ばれる水滸伝とは少し(というかかなり)違うことを最初に意識しないといけない。でないと違和感ばかりが残るだろう。これは明らかに水滸伝をモデルにした北方謙三のオリジナル作品と言えるものだからである。

「梁山泊はとにかく革命軍」。これがこの物語の中心。だから本家のように宗になびいたりはしない。そしてその「"志"が男を作る」これがこの物語の主題。だからどの登場人物もキャラが猛烈に濃いし、苛烈である。

面白いのは、登場人物(本家にある108人のみならず北方水滸伝のオリジナルメンバーまで)の人間関係が単なる主君に忠実な好漢たちとしては描かれていないところである。「あいつとは合わない」「気に食わないが命令なので仕方ない」「なんで俺の地位がこんなに低いのだ」まるでどこかの会社員のつぶやきのようであるが、これらはこの物語の中に出てくる会話にある。

また、"適材適所"ということも重要な事として物語を彩っている。実際、軍師だった人物が、現場で肌で感じる状況感との乖離を理由に民生を含めた統括に回されていたりもする。これなどは現代企業に置き換えれば、MBAを持つほどの秀才だが実営業経験が少なく現場から不評を買ってしまう営業部長を、その能力に見合った経営企画室長に異動、みたいな感じではなかろうか。

このように現代社会、そして当時でもあったであろう対人関係の複雑さと組織としての人材活用の難しさを物語の重要な要因としても絡めているのは彼ならとはいえ、サラリーマンはついわが身に置き換えたりしてしまったりするのである。

また、物語構成も今の時代に合っている。梁山泊が戦いを重ねるにつれ、列強の猛者を同志として取り込みどんどん強くなるのだが、最後に登場の宋軍元帥の同貫がその目的(=宋の打倒)を阻むべく大きな壁となり、目の前に立ちはだかるのだ。これなどはどのGAMEでもあるプロット、主人公は戦いをしつつアイテムを手に入れてステージを上げて行き、最後の最強ボスキャラに挑む、というゲームの基本セオリーを忠実に習っている。そのようなモノに親しんだ者にとっては読んでいてこのプロットは違和感がないのである。

総じて内容は戦士一人ひとりの技量が半端なく、ある意味漫画的だが、とにかく苛烈でワクワクさせるシーンは満載。読み進むうちに見事に北方謙三ワールドに引き込まれてしまう。エロもグロも盛り込まれ、大衆文学はかくあるべきなどと論じるのも野暮なほど現代の大衆文学に徹している。是非興味ある方は一読を。


投稿者 bellwin : 2009年11月01日 05:29

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